ピレネーを見晴らす丘に立つサン・キルク聖堂。絶景!
スペインの北東、ピレネー山脈のふもとにある「ボイ谷」は、ロマネスク建築で建てられた教会の宝庫です。
1000年も昔に建てられた、素朴でジミ〜な教会が、雄大な自然のなかに点在してまして。
この景色を眺めるだけでもこころ洗われるというものですが、ロマネスク美術は〝ゆるキャラ〟〝ヘタウマ〟の癒しキャラのオンパレード。
ロマネスク好きならずとも和めるアートなので、きっとお楽しみいただけるかと思います。
北スペイン、バルセロナとかに行くなら絶対! 足をのばしてココまで行く価値アリ。
ではでは、スペインのロマネスクを代表する教会を見に、出かけましょう。
→気になるところから読む
そもそもロマネスクって何? 何が魅力なの

ロマネスク様式とは、ざっくり10〜12世紀のヨーロッパに建てられた教会建築、キリスト教美術のことです。
ビシ〜っと天空に向けてとがった塔の立つゴシック建築の、ひとつ前のスタイル。
まだ建築技術が進んでないので、小さくて、ずんぐりしてます。
イマージ〝丸っこっちい〟。
大きな窓をとる技術がないので、なかはとっても暗い。
でも暗い分、細くて小さな窓から射しこむ光がドラマチックで、ステキです。
で、その効果はシッカリ意図されていて、祭壇の真うしろに窓があるので、朝のミサに光が射しこむようにできてます。
余談ですが…ロマネスク以前も以後も、教会の基本は、この〝東向き〟。
主祭壇が東になるように建てられてます。
立地によってムリな場合は、この限りではありませんが…
信者は西側にある入り口から入り、東の祭壇に向けて歩いていくわけです。
ラテン語で東、日の出る方向は、Oriens → オリエントってことで、
いまでもオリエンテーションという言葉には、教会の主祭壇を東に向くように建てることという意味があります。
仏教では〝西方浄土〟で西を意識しますが、キリスト教は〝東〟。
クリスマスのときの「東方の三博士」も〝東〟を暗示してます。
で、ロマネスク美術には教会を飾る彫刻や絵画もふくまれるわけで、コレがじつにかわいい。
愛すべきユルさです。
人物も動物も、だいたい三頭身。
赤ちゃんや仔犬や仔猫がかわいいのと同じです。
そして、決しておじょうずとはいいがたい稚拙さ。
これがまたこころに響きます。
このアタリで、多くの女子は完全にハマるはず。
もちろん男子にもロマネスク好きは多いです。
スペインのピレネー山脈まで、出かけなきゃダメなの?

もちろんロマネスクの教会は、スペインのいろいろなところにあります。
でも、スペイン・ロマネスクの至宝ともいうべき傑作「栄光のキリスト像」が、ここピレネーのボイ渓谷、サン・クリメン聖堂にあるんです。
いや、正しくはあったデス。
20世紀はじめに、傷みが激しいので壁からひっぺがして修復し、現在バルセロナの美術館に展示されてます。
じゃ、バルセロナで見ればいいじゃんとなるんですが…
そうでもナイ。
バルセロナの展示も、教会内部を再現しているのでソレナリなんですけど
やっぱり、山の空気を感じながらでないとネ。
でも、はがしちゃったんなら見れないじゃん
いや、これがですね、秀逸なビデオマッピングが2014年に完成。
1123年の創建当時のままの姿を楽しむことができるようになってるんです。
ワタシも復元コピーより原画ヨネと思うタイプなんですが、このビデオマッピングはスゴイ!
なんでも考古学者とマッピング制作者がチームをつくって完成させたとかで、彩色や描かれ方まで感じることができます。
感動して10回くらい観ちゃいました。
で、上の写真が最終形「栄光のキリスト像」です。
そして、人生初動画にチャレンジしてみました。
あっというまに終わっちゃいましたね。
彩色されてる感じも伝わらないし…
で、もう1回。
おいおいタテで撮るなよ…
なかなかウマクいきません。
こちら、もっとじょうずな人がアップしてた動画です。
8分半のロングバージョン
で、この教会、サン・クリメン聖堂のあるボイ谷には、ほかにもロマネスクの教会があり、「ボイ渓谷のカタルーニャ風ロマネスク様式教会群」として世界遺産に登録されてます。
なので、ピレネー山地まで出かけて行かにゃなのです。
ロマネスクは何を見る? どこに泊まる? どう行く?

まず、サン・クリメン聖堂は絶対外せないので、この教会のあるタウル村を拠点にします。
ワタシは1泊しかできなかったので、4つの教会しか回れませんでしたが、2泊するとこの界隈の主な教会6ケ所と近隣の自然公園を堪能できたりします。
この谷のロマネスク教会自体は、全部で22個もあるので全部見るのはけっこうたいへん。
でも、自然を満喫しながら全部制覇というテもあります。
ただ飽きちゃうかもしれないので、スキーと組み合わせて冬に行くのもアリです。
詳しいことが気になる人は、下記のサイトがおすすめ。
日本語はナイですが、ボイ谷のことがいろいろわかります。
→ CRVB Centre del Romànic de la Vall de Boíへ

ベストシーズンは、ジモティいわく6月と7月だそう。
雪が溶け、川の水も多くなり、花も咲き乱れて最高〜なんだととか。
8月は、ホテル満室状態。
けっこう人気なんですよね、この村。
自然公園を楽しむ人が多いんだって。
で、泊まるホテルですが
タウルは小さな村ですが、スキーリゾート地なのでホテルもあります。
が、ワタシが行った11月は…観光客が少ないので、B&Bしか空いてませんでした。
デモ、ここ「エル・シャレ・デ・タウル」が大当たり!
山小屋な建物で、バルコニーからの景色もグッド。
女性オーナーのアントニアがつくってくれる朝食が、最高でした。
彼女、音楽の趣味もよくって、軽やかなジャズがいつも流れてます。
El Xalet de Taüll (エル・シャレ・デ・タウル)
Carrer El Como 5, Taüll
+34-973-696-095
客室は3タイプあり全5室・ひとり1泊55〜92ユーロから
(オンシーズンは高くなります)
→ エル・シャレ・デ・タウルのサイトへ
問題のアクセスです
車、レンタカーで行くのがいちばんカンタン。
バルセロナから3〜4時間で、けっこう道もよいです。
山道に入るまでは高速が使えるし、山道もそんなにキビシクありません。
(冬の雪道はまた別)
バスで行く場合は、最低1回は乗り換えが必要で5時間強かかります。
電車だけではタウルに行けないので、レリダという街まで行ってバス。
こちらも5時間強。
タクシーで行けると楽チンですが、セダンで400〜450ユーロかかるもよう。
片道料金なので、ちょっと二の足ですが、スペインなので交渉の余地は大いにあります。
問題は、泊まったときの帰り道。
宿泊先に相談するテはあります。
電車のあるレリダまでの手段を相談という感じでしょうか。
でピレネーでロマネスク見たら、バルセロナでココへ!

先にこの国立カタルーニャ美術館で、本物の「栄光のキリスト像」はじめロマネスクのコレクションを見てから、ピレネーに行くこともできます。
でも、断然! ピレネーで雰囲気を味わうのが先!
シンとした山の雰囲気を思い出しつつ、オリジナルを見れば、かんたんに12世紀にタイムトリップできます。
ちなみに、学芸員の方にスペイン・ロマネスクの特徴を聞いたところ
「フランスやイタリアなど、ほかの国のロマネスクと大きくちがうのは、やはりイスラムの影響がそこはかとなく香るということです。
キリスト教の教会であっても、イスラム支配の影響は受けているので、柱頭に幾何学模様がほどこされていたり…
なにより、とてもエキゾチックです」
とのこと。
そんな目で見ると、「栄光のキリスト」も線が太くって、ヨーロッパ的というよりちょっと異国情緒なのかもです。
Museu Nacional d’Art de Catalunya(カタルーニャ美術館)
Palau Nacional, Parc de Montjuïc, Barcelona
+34-93-622-0360
観覧料:12ユーロ
開館時間:10時〜18時(10月〜4月)・10時〜20時(5月〜9月)・10時〜15時(日曜祝日)
休館:月曜
→ カタルーニャ美術館のサイトへ
*スペインに行く前に読んでおくと便利です→面白いけど役に立つ、5分でわかるスペイン基本情報
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