ラヴェンナ観光|世界遺産のきらめくモザイク画にシビれる

8 min
ラヴェンナのサンタポリナーレ・イン・クラッセ聖堂の祭壇画画像

北イタリア、アドリア海に面した小さな街ラヴェンナ。

古代ローマの時代から中世初期にかけて栄えたこの古都には、驚くほど精巧なモザイク画に飾られた世界遺産「初期キリスト教建築物群」があります。

1500年も経っているのに…

そのモザイクの鮮やかで豊かな表現といったら、素晴らしいのひと言です。

さらには恐妻家の皇帝とか、ダンサーから王妃に登りつめたサクセスストーリーなど、面白エピソードが遺ります。

ほおーっ!と感嘆の、みごとなモザイクを見に行きましょう。

ラヴェンナの世界遺産でモザイク巡り

ラヴェンナという街、いまではすっかり田舎の観光名所みたいになってますが、その昔は西ローマ帝国やビザンチン帝国(東ローマ帝国)西側の首都でした

で、モザイク画の遺る教会が、たくさんあります。

世界遺産登録されてる建物は8つです。

その内7ヵ所で、素晴らしいモザイク画を見ることができます。

地図にはみごとなモザイクが見られる順に番号を振りました。

  1. サン・ヴィターレ聖堂
  2. ガッラ・プラチディア廟堂
  3. サンタポリナーレ・イン・クラッセ聖堂
  4. 大司教博物館-サンタンドレア礼拝堂
  5. ネオニアーノ洗礼堂(オルトドッシ洗礼堂)
  6. サンタポリナーレ・ヌオヴォ聖堂
  7. アリアーニ洗礼堂

7番の「アリアーニ洗礼堂」は世界遺産登録ではありませんが、美しいモザイクが鑑賞できます。

逆に世界遺産の「テオドリック廟」ではモザイク画は見られないので、注意してください。

ラヴェンナ市内には「神曲」をこの地で書いたダンテのお墓もあります。

ワタシのおすすめは街外れだけど可愛い、3. の「サンタポリナーレ・イン・クラッセ聖堂」です。

ラヴェンナ1の観光名所、サン・ヴィターレ聖堂

サン・ヴィターレ聖堂の祭壇の画像

サン・ヴィターレ聖堂」は6世紀前半にできた由緒ある教会堂。

八角形のシンプルな外観のバジリカ(聖堂)で、中に入ると、ズコーンと高い天井、きらびやかに輝くモザイク装飾に、圧倒されます。

この聖堂は、4世紀に発見された聖人の遺骨を収めるためにつくられたものです。

ビザンチン帝国の黄金期に建てられただけあって、精緻この上ない技術と、気の遠くなるような作業で埋めつくされた、モザイク画を見ることができます。

とにかく、スゴい!

ただ、ずっと見上げる感じで、モザイク画を鑑賞するので、ちょっと首痛くなりますけど…

そして、よりディテールを見たいという人は、ビノキュラー(双眼鏡)を持っていくとよいです。

ラヴェンナのサン・ヴィターレ聖堂の画像
外見質素なサン・ヴィターレ聖堂

要チェックの、ヒゲのないキリスト像

ラヴェンナのモザイク画

なんといっても迫力なのが、祭壇のある内陣です。

黄金をふんだんに使っているので華やかで、窓からの光を受けてキラキラ輝いてます。

この空間に立つと、ちょっと崇高なこころもちにすらなるという…

宗教の演出。

こころ、揺さぶってくる〜。

上の写真は、センターにキリスト、両脇に天使、聖堂ゆかりの聖人と聖堂を建てた有名な司教が描かれてます。

キリストは世界をあらわす球体に座ってますけど、どこかサッパリとした面持ち。

アレ、ヒゲがない!

ヒゲのないキリスト

この〝ヒゲなしのキリスト〟は、昔(3世紀くらい)から描かれていて、若さの象徴と知恵の象徴だとか。

人間の形となって地上に現れる前のキリストの姿だ、とかいわれてたらしいです。

6世紀後半から、東ローマ帝国では〝ヒゲありのキリスト〟を描くのが主流になり、西欧でもだんだん〝ヒゲありのキリスト〟が定着したしだい。

それでも中世、13世紀ころまでは、〝ヒゲなしのキリスト〟もたくさん描かれていたそうです。

ちょい新鮮なんで、ラヴェンナに行ったら〝ヒゲなしのキリスト〟を、忘れずにチェックです。

イタリア・モザイク画の最高傑作は、皇帝と皇后の絵

ラヴェンナのモザイク画

キリストのモザイク画に向かって左にあるのが、ユスティニアヌス帝と廷臣たちのモザイク

ユスティニアヌス帝は、聖堂が建てられた当時のビザンチン帝国の皇帝。

イスタンブールにある有名なハギア=ソフィア聖堂を建てた人でもあります。

かつてのローマ帝国を回復した〝大帝〟とかいわれてるんですが、じつはこの皇帝、恐妻家としても有名。

なんでも、群衆の暴動におそれをなし、首都を捨てて逃亡しようとするのを、皇后に叱られて思いとどまったナンテ話があります。

ラヴェンナのモザイク画

で、皇帝のモザイク画の反対側が、皇帝を叱咤激励した皇后テオドラと従者たち

この皇后は、熊使いの父とダンサーの母から生まれた、やはりダンサー出身の女性です。

けっこうな切れ者で、反乱に尻込みの皇帝のお尻をたたいただけでなく、国政にも積極的に口をはさんでいたもよう。

でもそんな皇后のおかげで、強制売春の禁止や娼館の閉鎖などの法律が成立したといわれてます。

社会的弱者の女性の保護や権利の拡大にも尽力したとか。

いわゆる女傑ですね。

とまあ、描かれた人物像もさることながら、この2作品のモザイクはとくに素晴らしい。

光を受けて輝きを増すゴールドの使い方とかが、スゴく効果的です。

モザイク画でも知っておきたい、聖書のエピソード

ラヴェンナのモザイク画

この聖堂に限らず、西洋美術を楽しむためには、聖書の物語の知識が欠かせません(>>【聖書の美術】まとめ)

この聖堂にも超有名な旧約聖書の物語が描かれてます。

上の写真はアブラハムの饗応」と「イサクの燔祭(はんさい)」

信仰心の厚いアブラハムが、3人の旅人をもてなすの図と息子イサクを生贄として捧げるの図です。

旅人たちは頭に光輪が描かれてるので天使なんですが、アブラハムはそんなこととはツユ知らず、とにかく親切心でパンと肉をごちそうします。

ラヴェンナのモザイク画

そして画面右では、アブラハム が息子イサクを殺そうとしてます。

燔祭とはいけにえの動物を焼いて、神に捧げる儀式のこと。

このイサク、アブラハムが年老いてからようやく授かった息子なんですが…

捧げものの子羊がないアブラハムに、神がいうわけです。

「イサクをいけにえとして捧げなさい」って…

ごむたいな。

最後は、アブラハムが刃物を振り上げると、神の使いが現れて止めてくれるという結末にはなるんですけど。

Basilica di San Vitale Via Giuliano(サン・ヴィターレ聖堂)

住所Argentario 22, Ravenna
公式サイトhttps://www.ravennamosaici.it/en/
開館時間9時〜19時(11月2日〜3月:10時〜17時)*要予約
休み12月25日、1月1日
入場料10.50ユーロ(約1,500円・サンタポリナーレ・イン・クラッセ聖堂以外の共通券)

イタリア人強力推薦のガッラ・プラチディア廟

ラヴェンナのガッラ・プラチディア廟

次がガッラ・プラチディア廟

この霊廟は「サン・ヴィターレ聖堂」と同じ敷地内です。

時間のない観光ツアーだと霊廟をスキップすることもあるようですが、それはダメ。

霊廟のほうが小さくて〝付属〟のイメージがしますが、ジモティたちのおすすめモザイクNo.1は「ガッラ・プラチディア霊廟」です。

ラヴェンナのモザイク画

こぢんまりとした空間を、深いネイビーブルーのモザイクがみっちり埋めつくしてます。

プライベートなプラネタリウムみたいな感じ。

上の写真は、霊廟の正面上部に描かれた「火あぶりの刑で殉教した聖ロレンツォ」

鉄格子の上で火あぶりにされた聖人ですが…

刑の執行後、少し経過したところで「こちら側は焼けたから、ひっくり返したほうがいい」といったとか…

なんとも剛毅なエピソードの聖人です。

この霊廟の名前になってるガッラ・プラチディアはローマ皇帝の娘で、3度結婚して、最後は皇帝の母となった女性。

霊廟というくらいなので、ここに埋葬されたのかというと、そのあたりは定かじゃありません。

廟の中には、3つの石棺がありますが、これは彼女の親族のものらしい。

じつのところは、あまり研究が進んでいないようで…

ラヴェンナ最古のモザイクというのは確かです。

モザイクもきれいだが、窓も美しい

ラヴェンナのガッラ・プラチディナ廟

ギリシャ式の正十字の形をした小さな霊廟では、圧倒的なモザイクのパワーに気圧されます。

でも、じつはアンバー(琥珀)のはめられた窓からの光が、これまた美しい。

琥珀の窓の画像

次々と観光客が出入りするので、見逃しがちですけど、この窓の美しさを見てくるのもお忘れなきよう。

晴れてて、太陽の光が射しこんでると最高です。

そして、帰りぎわ。

出入り口のある北面の上部描かれた「よき羊飼いのキリスト」(下の写真)も忘れずに見ましょう。

モザイクで、ここまで写実的な表現ができるというお手本みたいな装飾です。

ラヴェンナのモザイク画

Mausoleo di Galla Placidia(ガッラ・プアチディア廟)

住所 Via Giuliano Argentario 22, Ravenna
公式サイト    https://www.ravennamosaici.it/en/
開館時間9時〜19時(11月2日〜3月:10時〜17時)*要予約
休み12月25日、1月1日
入場料10.50ユーロ(約1,500円・サンタポリナーレ・イン・クラッセ聖堂以外の共通券)+2ユーロの追加料金

素朴なサンタポリナーレ・イン・クラッセ聖堂を観光

ラヴェンナのサンタポリナーレ聖堂

ガッラ・プラチディア廟」とサン・ヴィターレ聖堂は、ラヴェンナの街なかにあります。

で、もうひとつモザイク画を見るならサンタポリナーレ・イン・クラッセ聖堂がおすすめ。

ラヴェンナ市内からタクシーで10分くらいの田園にある聖堂です(渋滞に巻き込まれると小1時間かかることも)。

6世紀半ばに建てられた教会がぽつんと立っていて、中もがらんとしてます。

でも、ここの祭壇上のモザイク画は、前2つのモザイク画ともまた違う趣で、ほっこりする感じ。

たまに訪れる観光客と、お祈りにくるジモティ数人くらいしかいないので、モザイク画を静かに堪能できるのも魅力のひとつです。

イタリアの迷える子羊を見つけよう

ラヴェンナのモザイク画聖人の足元にいる12匹の子羊に注目

両端の羊が真っ白でないのが分かるでしょうか。

ちょいビミョー…

このちょっとベージュな羊が〝迷える子羊〟なんだそうで、聖人に近い羊ほど白さが際立ってきます。

ちなみに、少し上に描かれている3匹の羊は、使徒ペテロとヨハネ、そしてヤコブなんだそうな。

神の手はアナタの頭上に

天井の神の手画像

で、迷える子羊を導く〝神の手〟がどこにあるかというと、十字架からさらにまっすぐ上に目をやると、錦雲からニョッキリ出ております。

こういう天から突然あらわれる神の手表現は、ビザンチン美術の特徴です。

ストレートな発想…

見落としがちなので、目を凝らして探してください。

それと、この聖堂のなんともいえないほのぼの感を体感してほしいです。

ラヴェンナのサンタポリナーレ・イン・クラッセ聖堂

Basilica di Sant’Apollinare in Classe(サンタポリナーレ・イン・クラッセ聖堂)

住所Via Romea Sud 224, Classe Ravenna
参照サイトhttps://ravennantica.it/en/santapollinare-in-classe/
開館時間月〜土曜:8時30分〜19時30分(日祭日:13時30分〜19時30分)
休み1月1日・12月25日
入場料5ユーロ(約730円)

ラヴェンナへの行き方

ラヴェンナへの行き方:
ミラノ,フィレンツェ or ヴェネツィア〜 電車で最低2時間半。
車だとフィレンツェor ヴェネツィア〜2時間半、ミラノ〜最低3時間半はかかる。

ミラノ,フィレンツェからの電車はボローニャ経由が早いです。

ヴェネツィアからの電車は乗り換えが多いので、約3時間のバスがおすすめ。

ちなみにタクシーだと、フィレンツェからがいちばん安いもよう。

フィレンツェ〜50〜70ユーロ
ヴェネツィア〜約250ユーロ
ミラノ〜約500ユーロ

*ネット調べなので、あくまで目安と考えてください

ラヴェンナ市内のモザイク見尽くす!

せっかくラヴェンナまで行ったからには、モザイク全部見るぞという方に。

残り4ヵ所の説明です。

サンタンドレア礼拝堂

サンタンドレア礼拝堂のモザイク画の画像
戦士のキリスト wjarek / Shutterstock.com

大司教博物館にあるサンタンドレア礼拝堂は6世紀半ば、コンスタンティノーブル(現イスタンブール )から移されたもの。

初期キリスト教時代の司教の個人的な礼拝堂として唯一のものです。

〝戦士としてのキリスト〟など珍しいモザイク画を見られます。

Cappella Arcivescovile o di Sant’Andrea(大司教教会 – サンタンドレア礼拝堂)

住所Piazza Arcivescovado 1,Ravenna
参照サイトhttps://www.ravennamosaici.it/en/st-andrew-chapel-and-archiepiscopal-museum/
開館時間9時〜19時 *要予約
入場料10.50ユーロ(約1,500円・サンタポリナーレ・イン・クラッセ聖堂以外の共通券)

ネオニアーノ洗礼堂

ネオニアーノ洗礼堂の天井画画像

5世紀初めのラヴェンナでもっとも古い建造物のひとつにあるネオニアーノ洗礼堂。

ドームの中央には洗礼を受けるキリストの描かれたモザイク画があります。

その周りには12使徒。

天井画を見上げるので首、ちょっと痛くなります。

Battistero Neoniano (ネオニアーノ洗礼堂)

住所Piazza Duomo 1, Ravenna
参照サイトhttps://www.ravennamosaici.it/en/neonian-baptistery/
開館時間9時〜19時 *要予約
入場料10.50ユーロ(約1,500円・サンタポリナーレ・イン・クラッセ聖堂以外の共通券)+2ユーロの追加料金

 サンタポリナーレ・ヌオヴォ聖堂

サンタポリナーレ・ヌオヴォ聖堂の画像
Sergio Delle Vedove / Shutterstock.com

5世紀末に建てられた教会堂。

圧巻なのは22人の聖女たちの参列です。

ラヴェンナの港から聖母子マリアとキリストのもとに向かっています。

Basilica di Sant’Apollinare Nuovo(サンタポリナーレ・ヌオヴォ聖堂)

住所Via Di Roma 52, Ravenna
参照サイトhttps://www.ravennamosaici.it/en/basilica-of-saintapollinare-nuovo/
開館時間9時〜19時 *要予約
入場料10.50ユーロ(約1,500円・サンタポリナーレ・イン・クラッセ聖堂以外の共通券

 アリアーニ洗礼堂

アリアーニ洗礼堂のモザイク画画像

ネオニアーノ洗礼堂」のモザイク画の源になったのがこの「アリアーニ洗礼堂」のモザイク。

12人の使徒の行列やキリストの洗礼の様子が見てとれます。

ネオニアーノ洗礼堂のモザイク画と見比べるとより楽しいです。

Battistero degli Ariani(アリアーニ洗礼堂)

住所Vicolo Degli Ariani 1, Ravenna
開館時間月曜〜金曜:9時〜12時(土日曜:9時〜12時・14時〜17時)
休み1月1日・12月25日
入場料2ユーロ(約300円)

昔のラヴェンナは、海がすごく近かったらしい

薬屋外観画像

街で見つけた古い薬局で、かつてここラヴェンナが、海に近かったコトを教えてもらいました。

この薬局自体は1888年創業なので、海が近かったころの店ではないですが。

古代ローマの時代、ラヴェンナが地中海のハーブと中東のスパイスを仲介貿易して栄えていたことを背景にした、そんなコンセプトで店をオープンさせたそうです。

で、実際、ケミカルな薬も扱うが、ハーブやスパイス製品もずらり。

薬草酒のたぐいも充実していて、定員さんの商品知識もハンパなかったです。

壁には、創業当時や20世紀初頭の写真もたくさん飾ってあり、店の創業者が、街の名士だった感じです。

第二次世界大戦ではレジスタンスとしても活躍したらしい…

と、こんなふうに街の歴史をバックボーンに、店をやっているのに好感がもてました。

モザイクも圧巻ですが、古代ローマの時代をセールストークにするあたり、さすがイタリアって感じ。

店は雑貨屋さんみたいに、いろんなものがあって面白いから、ぜひのぞいてみてください。

La Butèga ad Giorgioni(ラ・ブテーガ・ジョルジーニョ)

住所Via IV November 43, Ravenna
営業時間9時〜13時・15時30分〜19時30分
休み日曜(冬季は日曜の午前中営業)

*それぞれの開館・営業時間や休日、料金は変更になる可能性があります

ラヴェンナのモザイクを堪能したら、次はシチリアへ!→【世界遺産】シチリア観光でモザイク!古代ローマのビキニのお姉さんに会う

こちらのモザイクは、ラヴェンナの聖なるモザイクとはまた別の、古代ローマ貴族の生活がのぞける楽しい作品です〜

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