バルセロナにはおいしい店がゴマンとあり、さんざん紹介されつくされてると「バルセロナで話題は〝楽しい〟レストラン」でも書きました。
なので、もろもろ紹介されてはいるが、こんな紹介のされ方はしてないだろうというお話です。
まず、せっかくバルセロナに行くなら、ここでしか味わえないもの食べたい。
ただ、今回のご紹介する〝ここでしか味わえないもの〟は、変わった食材とかではなく〝文化〟。
〝カタルーニャ気質を食べる〟です。
バルセロナのあるカタルーニャ地方は、スペインの中でも特別。
「独立!」でケンケンガクガクのエリアです。
で、そんな気風というか、スピリッツみたいなものを、おいしい料理を食べて感じられたら、それはやはり、旅の醍醐味ではなかろうかと。
それも、世界最高峰といわれた伝説のレストラン「エル・ブジ」(バルセロナ、カタルーニャ語的にはエル・ブリらしい…)黄金期を支えた3トップのシェフたち。
となったら、ガ然、行く気になりません?
目次
ディスフルタールの料理は、おおっ!の連続

「ディスフルタール」の料理。
のっけからふつうのものは出てきません。
見かけと裏腹な、口の中でのサプライズを狙った料理ばかり。
ほんともぅね、楽しいですよ!
バルセロナだけど、ちょっとイタリア的前菜
手前の松ぼっくりの上に乗っているのが、オブラート仕様のラビオリ。
中には、バジルや松の実、パルミジャーノ、パンチェッタが入ってます。
用意されたスープにつけて食べるのだけど、口に入れた瞬間〝ジェノベーゼ!〟と叫びたくなる味が広がります。
見かけはまるで違うのに、口に入れれば、あの緑のジェノベーゼ・パスタです。
材料いっしょとはいえ、いや、なかなか。
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奥に見えるオリーブも、これ、信じられないほど手のこんだ〝料理〟。
まずオリーブとオレンジを潰してスープにしたら…
次にパルミジャーノのみじん切りを足してお湯に入れます。
雑なものを取りのぞくためにコして、油分と分ける。
それをゼラチンで固めて凍らせたら、カカオバターで色付けするという…
あ〜メンドクサ、という料理です。

でも、口に入れると、しゃか〜んと割れて、少し甘酸っぱいオレンジの香りのするオリーブ味のスープが溶け出ます。
すんごくウマイし、固い→割れた感じ→とろっと濃厚スープの3つの食感が楽しめる。
いやもう、さすが。
これぞ、お金出して食べる料理って感じです。
次に、おすすめメインディッシュ

ほほ、賢明なみなさんは、そろそろお気づきかと。
カルパッチョに見えますよね。
そうです。
カルパッチョです。
何か?
ただ、真ん中の白いのが、凝っててですね。
髄のゼラチンを1回煮てクリームにしてから、寒天で固めてます。
ほんと、この人たちの料理って、手間ヒマかけるよね〜
これまた口の中で、とろけます。
このクリーミィな髄とやわらかカルパッチョが、絶妙にからみ合うのでした。
伝統とモダン・スパニッシュ融合のデザート

これは、中にチョコが入ってる唐辛子型のデザート。
緑がミント味チョコで、赤がちょっと辛いチョコ。
カタルーニャでは昔、チョコとパンとオリーブオイルを合わせて食べていたんだそうな。
辛味チョコ、塩キャラメルみたいなもんですわね。
意外なとり合わせ。
ワタシ的には、塩キャラのが好きではありましたが。
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とまぁ、こんな感じのお料理が食べられるわけです。
サプライズと美味の連続技で攻めてきます。
ややオーバーだけど〝奇想天外〟びっくり仰天で、おいしい料理。
ま、サルバトール・ダリが生まれたカタルーニャですからね。
アントニ・ガウディだって、かなりな奇才ですし。
サプライズが好きな民族なんでありましょう。
この「ディスフルタール」について。
「いまさらエル・ブジ風料理なんて…」と思う人もいるようです。
流行りすたりという意味では、ちょっと遅れてるのかもだけど、でもまだまだ最先端の料理。
そして意外や、地元のシニアに「うんにゃ、懐かしいカタルーニャの味やのぅ」と人気があるらしい。
流行りとかよりもっと深い。
歴史的な味を再現してもいるわけですね。
だから、おいしいネでいいように思います。
ところでエル・ブジって? どんなレストラン?

そもそもの「エル・ブジ」を知らないと「ディスフルタール」を語ること至難。
(なので、「エル・ブジ」を知ってる人はココ読み飛ばしてください)
「エル・ブジ」とは、元祖〝世界一予約が取れない店〟。
コース料理だけのサービスで、多いときには全40皿なんてコースもあったという驚愕のレストランです。
1年のうち半年だけ営業して、残り半年は料理の研究開発をするという店で…
毎シーズン、メニューが一新。
つまり、二度と同じ料理は食べられないというレストランでした。
アルギン酸だとか、亜酸化窒素だとかを使って、〝分子ガストロノミー〟を提唱したフェラン・アドリアがオーナー・シェフ。
で、当時画期的、アバンギャルドだったこれらの調理法は、いまや世界中のレストランであたりまえのように行われてます。
日本でもTVが取り上げるなどして、一世を風靡しました。
学ランみたいなジャケットを着る料理研究家の招待で、フェラン来日。
ユズなど日本の食材に魅せられて、以後、彼の料理には多くの日本食材が取り入れられるようになります。

By OFFICIAL LEWEB PHOTOS
LE WEB PARIS 2013 – CONFERENCES – PLENARY 1 – FERRAN ADRIA https://www.flickr.com/photos/leweb3/11315101065
で、この店…
2011年、経営不振とかではまったくなく、〝このまま続けるの無理っす〟とあっけらかんと閉店したことでも有名。
その後フェランは、料理の財団・研究所をつくって、いまも料理研究に没頭してます。
2019年には「エル・ブジ1846」としてプロのシェフが革新的な料理を研究するラボをスタートさせる予定。
なんでも予約制の博物館も併設するというので〝食べられない〟けど、気になります。
また、東日本大震災のサポートに、フェラン自らが委員長となって来日し、世界のトップシェフ9人による料理サミットを開催したことも知られてます。
閉店直前の最後のメニューに、東北の食材が使われたのもニュースになりました。
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そして、この「エル・ブジ」。
総勢60〜70人のスタッフが全力で料理をつくっていたことで有名。
で、この大所帯を仕切っていたのが、今回ご紹介しているしてる「ディスフルタール」のオーナー・シェフ3人というわけです。
バルセロナ、カタルーニャ人のチームプレー精神が大事

で、「エル・ブジ」の席数は約50席だったとかで、スタッフ60〜70人って、多すぎじゃね?
そう思いますよね、ふつう。
でも、じつはカタルーニャの人たちって、抜群のチームワークが自慢だったりします。
いちばん分かりやすいのが、「人間の塔」と呼ばれる組体操みたいなもので、
カタルーニャ地方のお祭りなどで行われる、民族の象徴です。
これ、いちばん上に立つのは小ちゃい子なんだけど…
そのスターを支える土台となる人たち、高さをキープする胴体になる人たち、何十人もが協力してこの塔、つくります。
この精神こそ、カタルーニャなのだそうな。
土台や胴体となるような献身性、〝滅私〟を発揮できるのが、カタルーニャ人の強みなんだそうです。
サッカーの「FCバルセロナ」でも、メッシのために、みんなが滅私なわけですよ。
ま、このチーム、外国人選手も多いんですけど…

話を「ディスフルタール」に戻します。
3人のオーナーシェフたちはみんな、「エル・ブジ」でもトップを張ってた人たちです。
ま、頂点にはフェラン・アドリアがいたんですけれども。
で、3人それぞれが店をかまえても全然不思議じゃない実力者ぞろいなわけです。
ディスフルタールがバルセロナ1おすすめの理由
そんな腕前の3人のシェフでやってるのが、「ディスフルタール」です。
ともすると自己中なワタシには、このあたり、とっても不思議に思いますけれど。

オリオル
2人とは20年以上いっしょに料理をやってるからね。
家族の誰より長い時間を過ごしてるんで、
お互いのことがよく分かるんだよ。
リスペクトし合ってるから、意見をまとめる必要なんてないしね
この人「エル・ブジ」でも
番頭さんみたいな人でした。
いまも、まとめる必要ナイとはいってますが、まとめ役。
バルセロナっ子のカタルーニャ人です。

マテウ
みんなプロの料理人だからさ、毎日意見の出し合いだよ。
まぁ、ケンカともいうか…
でも、疑問を残したまま仕事するのはよくないからね
マテウは北カタルーニャの出身。
ふだんは、3人が最初に出した1軒のレストラン「コンパルティール」にいます。
*「コンパルティール」は、サルバトール・ダリの家がある港街カダケスにある店です。

3人なら、3つの脳と6つの目と6本の手があるわけじゃん。
ひとりじゃ気がつかないことも、誰かが気づける。
ケンカ? そりゃするさ。
でも、チームでやることが重要なんだよ
エドゥアルトは、バルセロナよりも南のタラゴナ出身。
もちカタルーニャ人の38歳。
3人の中ではいちばん若いけど、ほかの2人が42歳なんで、あんま変わらない。
と、チームであるのが当然ヨという3人の答えに
え〜、君ら優等生すぎない? と若干いぶかりながらも…
まぁ、これがカタルーニャ気質なんでしょうねと納得したワタシです。
いまどきレストラン・バルという気楽さがおすすめ

で、この「ディスフルタール」、入り口からテーブルに行き着くまでに、オープンキッチンの間を通ります。
食後の帰り道も同様。
これって、かつての「エル・ブジ」。
客は最初にキッチンに行き、そして帰る前にもキッチンに寄るようになっていたのを、簡素化したシステム。
思うにオマージュなんじゃないでしょか。
スタッフも厨房とサービス合わせて30人ほど。
小さな店ですが…大所帯。

もちろん、イマドキの顔もあわせもってます。
最近バルセロナじゃ、バルより落ち着いてて、レストランよりカジュアルな
〝レストラン・バル〟なる形態が人気。
「ディスフルタール」はまさしくそれで、とてもカジュアル。
そして、オープンした直後の2015年にミシュラン1ツ星を獲得し、2022年現在2ツ星です。
カジュアルな構えなので、3ツ星にはならないでしょう。
というわけで、ただの「エル・ブジ」郷愁って店ではありませぬ。
コースメニューはクラシックとフェスティバルの2種類でどちらも235ユーロ(約3万4000円)。
ワインのペアリングも2種類で110ユーロ(約1万6000円)と145ユーロ(約2万1000円)です。
もちろん安くはないけど、決して高くはありません。
問題は、やはりこの店も予約が取れない…
「エル・ブジ」ほどではないにしても、半年以上先までフルブック。
でも、あきらめずに直前に電話すると、ひょんなことで取れたりもするらしいのでトライを。
オンラインには「ウェイティングリスト」も記入できるので粘れます。
*なんでも予約の確認を1週間前にするらしいので、希望日の1週間前を狙って電話するのもアリです。
最後に。
まぁ、シノゴノ書きましたが、うまくて驚きの連続なので、おすすめです。
そして、店名の「ディスフルタール」は〝楽しんで〟という意味。
コチラの記事→バルセロナで話題は〝楽しい〟レストランにもつながるということで。
どうぞよろしく!
Disfrutar | ディスフルタール |
住所 | Carrer de Villarroel 163, Barcelona, Spain |
営業時間 | 13時〜16時30分・20時〜24時09分 *メニュー数が多いので、この時間にはスタートしないとってことです |
休み | 土・日曜 |
公式サイト | ディスフルタールのサイトへ |
電話 | +34-933-486-896 |
Copyright © tabi-travell.com All Rights Reserved.
8 件のコメント
ディスフルタールの件で、以前コメントさせていただきました。
その際はお世話になりました。
あれからすぐに予約をし、楽しみにしていたのですが、お店からの返信メールに「予約ありがとう。3日前に確認メールするね。返信が無かったら、1日前に電話するね」とありました。
(もちろん、もっと丁寧な英語ですが)
「えっ。
その時は洋上日。電話もらっても出られないし。」となりまして。
一旦自分の予約を取り消し、カード会社のコンシェルジュサービスならどうにかなるかと聞いてみたのですが、やはりNG。
残念ながらディスフルタールのお食事は諦めることになりました。
本当に残念です。
お店の感想をご報告したかったのですが、それも叶わず。
もし、次回があったら、その時は必ず行きたいと思っています。
いつかご報告できますように。
失礼いたしました。
おおっ! それは残念。
確認のメールだったら、その頃はクルーズで、メールも電話も受けられないのといえば、問題ないかなと思うのですが…ダメでしょうか。
でも、あんまりご無理させては、いけないですね。
バルセロナは美味しいお店だらけですから、楽しんでらしてください。
わざわざご連絡ありがとうございました!
これからもよろしくお願いいたします。
そうなんですよね。
その旨、伝えてもらえないかとコンシェルジュサービスに話してみたのですが、責任を負えないということらしく受け付けてくれませんでした。
自分で言えるほどの英語力が無いので、コンシェルジュサービスを使おうと思ったのですが。
ホントに残念。
仕方がないと諦めました。
そうなんですね。
文章でなくとも、クルージングの日程と確認のメールはいつにして!という文言だけでOKだと思いますが…
なんだか残念なので、ついつい深追いしちゃいました。
突然失礼いたします。
10月にクルーズに行くためバルセロナに滞在いたします。色々調べていて、こちらのブログにたどり着きました。
エル・ブジのことは知っておりましたが、まさか後継レストランがあったとは。
とても興味深く読ませていただきました。
そして行ってみたいと思ったわけですが、いかんせん言葉が。スペイン語どころか英語すら喋れません。
勢いで行ったら後悔しますかね。
説明が分からなければ、楽しさ半減とか?
一言いただければ思い、コメントさせていただきました。
地中海クルーズですか! 羨ましい。
ディスフルタール、ぜひぜひいらしてください。
言葉は問題ないです!
まずメニューは、細かく選ぶ必要がないですから第1関門クリア。
2、3種類のコースはサイトに載っているので、事前に見ておきましょう。
説明も、まず食べて、彼らのクイズを当てるつもりで味わうのが一番です。
定番化している料理もあるので、見たことのあるものが出てくる可能性もあります。
それでも分からないときは、メモに書いてもらうことです。
ここのサービスはとても良いので、ヤな顔せずに書いてくれると思います。
食材がなんなのか知りたければ、食材・調理法が知りたければ、調理法といった英単語だけ覚えていくなり、メモして見せることです。
英語で聞かないと、メモがスペイン語やカタルーニャ語になっちゃうのでご注意を。
美味しいだけでも十二分に満足できると思いますから、ぜひ予約してみてください。
オンラインで予約できなくとも、お泊りのホテルに頼んで電話してもらうなど、手間をかける価値は大いにあるレストランです。
ぜひ素敵な旅を!
お帰りになったら、感想をお聞かせください〜
ご丁寧な返信をいただき、ありがとうございます。
勇気が出ました。
ぜひ行ってみようとおもいます。
お店のHPから予約が出来そうなので、よーく読み込んで予約しますね。
パソコンなら翻訳機能があるのでなんとかなりるのですがね。
教えていただいたように最低限の単語を頭に入れていきます。
前泊と後泊するのですが、なんの予定もなかったので(せいぜいサグラダファミリアとグエル邸ぐらい?)これで楽しい滞在が出来そうです。
10月の予定なのでまだ先ではありますが、ぜひご報告させてください。
本当にありがとうございました。
楽しみですね〜
バルセロナにはもちろん安くておいしいバルもたくさんありますが、ディスフルタールの料理はここでしか食べられないので、いい思い出になると思います!
スペインやイタリアの人の英語って、日本人には聞き取りやすいので、単語ならべて、会話にも挑戦してみてください。
ステキな旅を❗️