最近日本でも話題にのぼる「スペインの美しい村」ですが、全部で68村、じつに味わい深くてチャーミングなところが多いです。
北スペインの田舎に、思いもかけずイスラムの影響を見つけたり…
「オラが村の教会」をだいじに、だいじに守っているなという思いが伝わってきたり。
ローダ・デ・イサベナも、そんな「オラが村の教会」のある街。
ただし、この村にあるのはただの教会ではなく大聖堂という。
人口20人の街にはおよそミスマッチなのですが…
*大聖堂とは、カトリックでは教区の司教が務める教会のことで、エリアの教会を束ねるポジションです
目次
ローダ・デ・イザベナという街
標高907m、3つの山脈に囲まれたローダ・デ・イサベナ。
ローダ・デ・イサベナは、古代ローマの時代の城壁を起源とする歴史ある街です。
そしてレコンキスタ(国土回復運動)の時代、対イスラムの要衝として、監視塔をもつ要塞になります。
最前線でした。
10世紀半ばには司教座となって、一帯の教会を統括する役割を担うほど力があったのです。
でも、レコンキスタが進み最前線が南下すると、だんだん衰退。
司教座も移転して…
時代に取り残されたローダ・デ・イサベナには、20人の村人しかいません。
いまでは〝大聖堂のあるスペイン最小の街〟です。
それでもローダ・デ・イサベナのみごとな大聖堂を見ようと訪れる人のために、大聖堂の食堂は旅人のためのレストランになっていますし、宿泊することもできます。
冬の食事には、最高品質のイサベナ渓谷のトリュフが食べられるかもしれません(願望)。
大聖堂の見どころは地下の礼拝堂
ローダ・デ・イサベナを守り、村人に守られているサン・ビセンテ大聖堂は、10世紀に建てられたものの11世紀にはイスラム教徒に破壊されてしまいます。
すぐ後に再建されたのが、現在のロマネスク大聖堂の姿。
修復作業は12世紀にまでつづいてます。
主祭壇の後陣はかなり高く設計されてます。
祭壇の壁の両脇にはこんな飾りが…
イスラム教徒?
ターバンといい剣の形といい…妙にリアルで、しかも教会にこんな飾りが?
聞きそびれてしまいましたが、次回までの宿題です。
みごとな石棺彫刻
地下礼拝堂は3つに分かれています。
真ん中の礼拝堂の祭壇にある石棺は、ワタシにもわかる聖書のシーン。
じつは日本に帰ってきてから調べたのですが…
美術史家の金沢百枝さんの『ロマネスク美術革命』(新潮社)に、この石棺の記述がありました。
12世紀のイングランドで制作された『セントーバンス詩篇』の挿絵[図4]では、動物たちが飼い葉桶のなかのイエスをペロペロ舐めています。こうした、動物たちによる愛情表現は11世紀頃から激増し、ロマネスク彫刻にもしばしば見られます。
スペインのウエスカ地方、ロダ・デ・イサベナのサン・ビセンテ聖堂に残る石棺彫刻[図5]では、右側の動物が噛みついて見えるくらい大きく口を開けています。イエスの足元を温めているようにも見えます。フランシスコ会成立以前から、そうした伝承があったのでしょうか。
コチラのサイトで読めます→工芸 青花の記事
おおっ、たしかに揺りかごのイエスの両脇に動物が見えます。
大聖堂とはいえ、こんな田舎の教会の彫刻について書かれたものがあるということで、ちょっと感動。
やはり美術史を知っていると、ヨーロッパは面白いですね。
勉強せねば! 精進です。
この写真は地下礼拝堂の向かって左。
フレスコ画が色鮮やかに遺っているのが分かります。
改めて、天然顔料はスゴい。
回廊の様子。
柱頭彫刻はシンプルでしたが、アーチになにやら碑文が…
このサン・ビセンテ大聖堂は、19世紀まで修道院として活動していたとのこと。
当時で、10〜20人の修道院がいたそうです。
かなり大きな教会であるのが、説明図からも分かります。
街自体も歩いていて、人口20人とは思えない趣なのですが…
過疎化が進んでしまったということでしょうか。
大聖堂を案内してくれたマダムいわく「まったく20人で、どうなっちゃうのかしらね〜」と。
でも…スゴい深刻ではない雰囲気に、マダムの胆力を感じました。
ローダ・デ・イサベナはピレネーの裾野の街です。
ところで「スペインの最も美しい村」とは
最近、日本の旅行業界でもチラホラと聞くようになった「スペインの最も美しい村」。
これ、勝手にキレイな街のことをいってるのではなくて、「スペインの最も美しい村協会」があります。
- 人口15,000人未満
- 認定建築あるいは自然遺産をもっていること
この条件をクリアした後
- 清掃の状態
- ファサードの保全
- 交通車両について
- 駐車場
- 花などの植栽 ナドナドさまざまな品質基準のチェックがあります。
一度協会に加盟できても、数年後には再監査があり、条件がキープされているかどうかがチェックされるとか。
2019年春、全部で68の村の加盟が許されています。
もともと1982年に、フランスで「Les Beaux Villages de France(フランスの美しい村)」が発足。
ベルギー、カナダのケベック州、イタリア、ルーマニア、ドイツそして日本にも、この活動は広がっています。
*今回ご紹介したローダ・デ・イサベナから近い「スペインの最も美しい村」は、アインサとアルケサル。
3ヶ所回ると、それぞれの街の雰囲気の違いがつかめて面白いです。
回り方については>>【スペインの最も美しい村】の回り方❶ピレネーの麓3村がすっごく魅力的だ
不便なアクセス解決法
ロダ・デ・イサベナをはじめ「スペインの美しい村」は、往々にしてとても不便な場所にあります。
だからこそ素朴さだったり、手つかずの自然だったりが残されているのだと思いますが…
ジレンマ。
レンタカーで巡れる時間的な余裕があり、ドライブ慣れしている人なら問題はないのですが。
運転はできても疲れますし、短期の旅行だとロスも多いです。
スペインはタクシーお安め
スペイン旅行前の基本情報。使用通貨やチップ、文化とかを面白く把握しよ
↑コチラの記事にも書きましたが、スペインは比較的タクシー料金が安いです。
だから飛行機や電車で移動できるところ以外はタクシーを使うというのが、おすすめ。
ワタシはマドリード〜アンダルシアを回って〜マドリードの行程を、各地のホテルで手配してもらって移動しましたが、びっくりするほどの値段にはなりませんでした。
行程ずっとお抱えドライバーで回ったら、結構な金額になると思いますが…
ローダ・デ・イサベナに近い県庁所在地ウエスカから、1時間半弱の行程。
料金はおよそ1万5000円です。
タクシー…基本、英語は通じません
で、ひとつ問題が。
スペインのタクシーの運転手さん、基本、英語ムリです。
多くの日本人レベルで単語だけでも分かってくれるといいのですが…なかなか。
順調ならばいいのですが、問題が起こるとちょっと厄介。
「頼んでいたタクシーが来ない」
と、北スペインのアラゴン州のプレストリップをアテンドしてくれた方のガイドが素晴らしかったので、ご紹介しておきます。
スペインの小さな街の旅行社に、日本人スタッフ!
今回ご紹介したローダ・デ・イサベナはアラゴン州のウエスカ県というところにあります。
で、このウエスカにある「エン・デスティーノ」という旅行会社には、ナント日本人スタッフがふたりもいるのです。
1週間ガイドしていただきましたが、もう完璧! のお墨付きアテンドでした。
「エン・デスティーノ」は北スペインとピレネー山脈専門の旅行会社で、いろいろな形で旅をサポートしてくれます。
クルマの手配だけでもお願いできますし、何かトラブルがあった場合に対応してくれます。
旅程によって費用は大きく違うので、基本、見積りを出してもらうことになりますが…
予算との兼ね合いもあるので、チョコっと目安を教えてもらいました。
クルマの手配 | セダンタイプの専用車:1日100ユーロ〜 |
シーズン・走行距離・ドライバーの待ち時間によって料金が決まる タクシーの手配も可 |
個人旅行の相談・手配 | たとえば3日間の相談・日程作成:50ユーロ | 手配費用は内容によるので要相談 |
日本語ガイド |
半日(4時間):120ユーロ 終日(8時間):194ユーロ |
*2022年11月17日現在、100ユーロ=約1万4400円
こうした「エン・デスティーノ」のような現地の旅行会社にスポット的にお願いするのもアリです。
現地ツアーで適当なツアーが見つからないときや…
バルセロナに出張だけど、週末2泊3日で出かけたいナンテときにありがたいです。
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