地中海のまん中に浮かぶシチリアは、古代ローマ人だけでなく、ギリシャ、アラブ、スペイン、フランス…と、さまざまな民族に支配されて文化をつくってきた島です。
食文化ももちろん!
いろんな料理がミックス、融合されてます。
そんなダイナミックかつユニークな料理を、ラグーザという街で食べちゃいましたというお話。
シチリア屈指のリストランテ「ドゥオモ」の、ほっぺた落ちまくりの料理をご紹介します。
目次
名レストランひしめく小さな街、ラグーザ
ラグーザという街、人口約7万人というこぢんまりとした街ながら、昔から豊穣な土地で知られたところです。
日本ではパレルモやタオルミーナほど知られてませんけど、この街、じつはグルメ天国。
ベタな表現をすると、シチリアにあるミシュラン2つ星4軒のうち2軒が、この街にあります。
シチリアに3つ星レストランはないので、食いしん坊はみな、ここを目指すわけです。
ほかにもおいしいレストランはあるし、「ラグザーノチーズあり、郷土菓子で有名なパスティチェリア(菓子店)ありの、めくるめくグルメワールド。
で、ここ「ドゥオモ」です。
安定の2つ星連続ゲット更新中で、滋味深いローカル食材を、五感にアピールする料理に仕上げて食べさせてくれます。
どっきりするほど奇想天外ではないけど、じつに味わい深いおいしさを堪能できるレストラン。
旧市街に立つドゥオモ(大聖堂)の裏にある、バロックの建物のリストランテ「ドォオモ」です。
シチリア郷土料理の進化形が食べられるレストラン
いまでこそ、世界的に地産地消だの、郷土色豊かな料理だのというのがあたりまえになってますが…
この店のシェフ、チッチョ・スルターノがローカル食材や郷土料理に愛情を注いできたのはかなり以前から。
上の写真の料理は「マグロのボッタルガ(カラスミ)〝タラタタ〟スパゲッティ、ニンジンのピュレ添え」37ユーロ(約4,500円-うっ、高い…)
シェフのスペシャリテのひとつです。
舌を噛みそうな〝タラタタ〟というのは、アラブ人との闘いで剣がぶつかり合うときの音だそうで、さまざまな食材がぶつかり合って生み出すモノを表現しているのだとか。
実際食べてみると、魚卵、レモンやオレンジのジュース、ピール、パセリ、ケッパー、バジル、蜂蜜でマリネしたチェリートマトなどなどが、それぞれ味を主張しながら一皿をつくり上げている感じでした。
口の中で、いろんな食材が闘ってる。
溶けあってとか、そんなまろやかな味ではなく、どれも元気に個性を発揮してます。
でもヤじゃない味なんです。
パスタが繋いでるのかなぁ。
最終的にまとまってるからスゴいよね、と思った一皿です。
これが、自家製ボッタルガ、カラスミですぜ。
シチリアの郷土料理によく登場するボッタルガは、マグロの卵巣を塩漬けしたもの。
ボラのカラスミとはまたひと味違います。
ま、いずれにしてもコレだけでワイン、ぐいぐいいけますわね。
シチリア料理界のドンてな感じのシェフ・チッチョ
さて、シェフのチッチョ。
休憩時には葉巻をくゆらせ、なんかいかにもな感じなんですが…
身ぶりと笑顔がかわいい人でありました。
とはいっても、やっぱりボスな風格あって、ゴッドファーザーな雰囲気も…
と、
「ウチに居たコが東京で店を出したんだ。
食べに行ってやってよ」とチラシを出してきて、シェフ自ら弟子の店の宣伝。
世話好きのやさしい親分肌なのネと思わせる一面も見せてくれました。
料理に人柄って、出ますからね。
重要です。
シェフいわく「食材のもってるパワーを最大限に引き出すことが、オレの信条。
ひとつひとつの食材の滋味が、融合するのではなく、闘いを生み出すことなんだ」
仰る通り、先ほどのパスタ、闘っておりました。
彼の料理に使われている食材は、いずれも気配を消すことがない。
やさしい味でも、きっぱりとした個性が感じられる。
これは、なかなか高度なことだと思います。
力強くて、かつ繊細な料理。
そして、たとえようもなく豊かなこころ持ちにさせてくれる、絶妙至極の味と思います。
満腹感じゃなくて、満たされる感じ。
口福って当て字は好きでないですが、そんなイメージです。
「料理はジャズの即興演奏のようなもの。
だから同じ食材で、同じ料理をつくっても、ひとつとして同じものにはならない。
いつだって、まったく別の料理になる」
のだそうです。
さすが、食のアーティスト。
カッコイイ言葉が似合うシェフなのでした。
名産の極上食材にて仕上げる、逸品郷土料理
「黒仔豚キアラモンテ風」44ユーロ(約5,400円-た、高い…)
これは、ネプロディ山の黒豚に、カンタルーポ地区のメロンのソースをかけたものですが…
ネプロディの黒豚というのは、シチリアの土着品種で幻の豚といわれているもの。
カンタルーポのメロンはオレンジ色したメロンですが、もちろん使っているのはシチリア産。
キアラモンテはこの店のあるラグーザ県のコムーネ(町や村みたいなもの)の名前です。
つまり、この地方風ってことですね。
ハーブのクラッカーと炭焼きの野菜が添えられてます。
ま、ほっぺたは落ちますわ。
でこちらも〝ただ食われね〜ぞ〟という意志の強い豚肉。
獣味っていうんでもないんですが、濃ゆい肉味です。
魚料理は、「魚卵に見立てたナスのクリームの上に、岩場で獲れたヒメジ
いずれも炭の香りをくわえ、コリアンダーとフェネルのスープ」34ユーロ(約4,100円-はは…高い)
いうまでもなく、食材の味がしっかり口に広がりましたが、
スパイシーなスープがアラブな雰囲気を醸しておりました。
さすが、シチリアの料理です。
デザート=ドルチェは「カッサータ・ディ・リコッタ」17ユーロ(約2,000円)
カッサータはシチリアの伝統的なお菓子で、やはりアラブ由来のもの。
リコッタチーズもシチリアではよく使います。
ふつうのカッサータはがっつり甘いですけど、ここのは大人の甘さでした。
ブロンテのピスタチオのアイスクリームととろけるチョコレートがけ。
ブロンテは、ピスタチオが特産のシチリアの村です。
上品にしてアダルトなドルチェってお味でした。
郷土料理には、シチリアワインでしょ
ドゥオモの料理だけでいくらでも書けてしまいますが、ここのワインストックも素晴らしいのでありました。
店の並びにある建物の地下にワインセラー。
ここには、ヨダレもののワインがゴマンと眠ってます。
この「ドゥオモ」のソムリエは、メートル&ソムリエ協会のシチリア代表で、彼のアドバイスも幅があってとても的確でありました。
シェフ・チッチョの大盤振るまいもあって、おほほ、何本おいしいワインを開けたかしら。
やったね、役得。
闘う料理をいただく、エレガントなレストラン
食材の個性際立つ〝闘う料理〟が信条のレストランですが、店内はとても明るくシック。
シェフのキャラともちょっと違うようにも思いましたが、彼の料理が見せる繊細な一面が、内装にも反映されていると思い直しました。
そう、チッチョのつくる料理って、とても品がいい。
すり寄っていないというか、シャンとしている感じです。
イメージなので、伝わりづらいと思いますが、食べると納得するはず。
シェフの度量の大きさや筋の通った生き方が、料理の味に現われていると思いました。
まとめ
「ドゥオモ」のみごとな郷土料理を食べたい人は、まずラグーザを目指してください。
国際空港のあるカターニャからだとバスで2時間弱。
ラグーザ郊外には、ライアン・エアが就航するコミゾという小さな空港もあります。
こちらはローマ、ミラノともに1日1便。
とまぁ、やや不便ではあります。
が、バロック建築を見つつのグルメ旅は、かなりのおすすめ。
そして、とてもきになるお値段ですが、じつはリーズナブルなメニューが用意されてます。
たとえば、3品+水、コーヒー、プチフール=45ユーロ(約5,500円)とかですね。
これはかなりお得感の高いメニューです。
DUOMO(ドゥオモ)
Via Capitano Bocchieri 31, Ragusa Ibla, Ragusa, Sicilia
+39-093-265-1265
→お店のサイトへ
ランチ12:30〜15:00 ディナー19:30〜24:00
休みは日曜と月曜のランチ
*営業時間や休日、料金は変更になる可能性アリ
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